» 時計屋のひとりごと 第9回

時計屋のひとりごと 第9回

2012年05月23日(水) | コメントできません

振動数と時計

振動数とは一秒間に 振り子が何回振るかといううことです。
この振動数により時計の精度が基本的に決まってくる訳です。
一秒間に1回振り子が振れば 1振動ということです。
ちなみに 28800振動 とか21600振動 36000振動というのは
1時間あたりの 振動数を表します。(28800振動は1分あたり480振動と
いうことになり 1秒あたり8振動となります。)

振動数の少ない時計(機械式時計)はというと 身近なところではホールクロックで
1振動がほとんどと考えられます。ところが精度は非常にいいんですよ。
これは 動力がオモリと関係していると考えられます。
次に掛け時計(ゼンマイ式)は 1振動~2振動のようです。
8日巻き時計や一ヶ月巻き時計や中には二ヶ月巻きが作られていました。
動力はもちろんゼンマイというわけです。ところが一ヶ月も二ヶ月も
動かそうとしている訳で 強いゼンマイを使うため 地板の磨耗が
はげしいという欠点も出てきてしまいました。(10年~20年使った場合)
それでも1週間に1回ゼンマイを巻くよりも一ヶ月に一回の方が楽なわけです。
精度は月に2 3 分ということでしょうか(それでも ゼンマイを巻くときには時間をあわせましたから)

腕時計(機械式)は というと市販のモデルで昔には4振動
 現在でも5振動 5.5振動 6振動 8振動 10振動
と テンプを振っています。 振動数が 多ければ 精度は上がるわけですが
SEIKOでは コンクール用に20振動時計を作ったそうですが
あくまでも コンクール用の時計で市販されることは
なかったようです。(コンクールは 一ヶ月間ぐらいと思います。)
現在は 私の知っている範囲では IWCの8日巻きポルトギーゼが 5振動です。
6振動では ブライトリングのコスモノート(手巻き)オメガのスピードマスター・プロフェッショナル(手巻き)等
8振動は 現在の主流のムーブメントです。5.5振動は 頭に浮かびません。
10振動は ゼニスのエル・プリメロが有名です。

実際は振動数が高ければ精度がいいとは 限りません。

 1960年代に100振動の音叉時計ありました
ハミルトンで開発されたものと覚えております。(耳にあてると プーンと音がします。)
この時計は 確かに時間が 合いました。なにせ機械時計の約10倍の振動数ですからね。
SEIKO CTIZENでも 販売されましたが その後 SEIKOがクオーツを69年
に発表したために 音叉時計は 販売期間が短く 現在は部品もほとんど手に入りません。

1969年SEIKOが世界発の水晶発信式腕時計アストロンを発表 日差0.2秒
ステップ運針のクオーツ 振動数は1秒間に32768振動 音叉時計の約300倍
機械式の約30000倍という 高さ 時間が合わないわけがない。
その後 CITZENでは メガクオーツを発表している。

現在ではクオーツ式に温度補正装置をつけ年差10秒と驚異的精度を誇っている。
また CITIZENの電波時計は電波を受信している限り 誤差を表現するのに
計算上10万年に1秒と表現している。

人間の生活の中でここまで 精度が必要かは 疑問です。

カテゴリー:時計屋のひとりごと

コメントはありません

コメントまたはトラックバックをお寄せください。

この記事に対するコメントは受け付けておりません。

Copyright(c) 2024 精工堂時計店. All Rights Reserved.