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時計屋のひとりごと 第7回

2012年05月23日(水) | コメントできません

1.リンドバーグとロンジン社

私は リンドバーグは もちろんロンジン社のリンドバーグ(腕時計)を
つけて
1927年 大西洋の単独横断に成功したもとばかり思っていました。

ロンジン社製のリンドバーグ・ブランドの腕時計はその独自の機能とあいまって
あまりにも有名な時計である。「アワーアングル」と呼ばれるその機構は
腕時計のベゼル部分を回転できるようにして、一種の円形計算尺機能を
付加したもの。回転ベゼル機能そのものは リンドバーグが航空技術を学んだ
際の教官であった海軍軍人ピーター・H・ウイーズムの考案によるものであった。
(ロンジン社では ウイーズムモデルの市販されていました)
リンドバーグはこの機構を拡張して、経度としても使えるようにしたのである。
しかし、このアワー・アングル(回転ベゼル)の考案と商品化は
大西洋横断に先立ったものではなかった。ウイーズムタイプもリンドバーグタイプも
回転ベゼル付き腕時計が一般に市販されるようになったのは
1928年のことである。
リンドバーグの乗ったスピリット・オブ・セントルイス号には
必要最小限の機器の以外はいっさい搭載してなかった。当然ながら
操縦席のパネルには、航空時計がはめ込まれていた ならば
なぜ 別に腕時計をしてゆく必要があるだろうか?
記録によれば
航空時計はウオルサム社製であったという。

2.リンドバーグとL社

それでは ロンジン社伝説はどこから生まれたのかリンドバーグの冒険以後、
リンドバーグの名声にあやかろうと幾つもの時計メーカーが声を
かけたその中では L社は最も実体のある便乗組といえた
リンドバーグがパリに着陸した時、飛行場の管制室でその時刻を
計測した精密時計(クロノメーター)こそ、ロンジン社製だったからだ。

L社の資料は リンドバーグが旅の途中で自らの位置を一時見失ったこと
そのために気軽に経度を知ることできる機器をもとめるようになったと記している
そのための最適の道具としてリンドバーグが注目したのが
ウイームズのベゼル機能ということである。
ロンジン社にとって 具体的な貢献度よりも、L社にとっては、1928年の時点では
リンドバーグの名前こそ重要だったのである。

1930年には全米の雑誌に、「リンドバークも愛用」とキャッチフレーズのもとで
ロンジン社ならぬブロバ社の広告が掲載されている。
広告の本文には、リンドバーグが大西洋横断飛行後に使用している
飛行機にはすべて、ブロバ社の「タイムピース」(時計)が搭載されているとある。
ウオッチ(懐中時計や腕時計)ではなくタイムピース。この時点では腕時計の
ロンジン社、機体装備の時計はブロバ社という使い分けがなされていたというわけだ。
しかし、1930年代も後半になると、ブロバ社の広告からはリンドバーグの名前が消える。

そして、アワー・アングル付きの航空腕時計は、リンド・バーグの名前とともに、
先進的な腕時計メーカーとしてロンジン社のシンボルとなる。

「腕時計の誕生」 女と戦士たちのサイボーグ・ファッション史
永瀬 唯 著 廣済堂出版  より

カテゴリー:時計屋のひとりごと

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