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時計屋のひとりごと 第4回

2012年05月23日(水) | コメントできません

ブレゲが発明したトウールビヨンのメカニズム


機械式時計には姿勢差がつきものである。この姿勢差は テンプ自体の

重心誤差(車でいえば ホイルバランス)や作動中のヒゲゼンマイの伸縮

によって起こる重心移動などに起因する。早い話、機械式時計は裏か表か

何時の位置が上になっているかといった「姿勢」の違いによって、時間の

精度に誤差が生じる。この解決策として いまから200年も昔、かの天才

時計師ブレゲが考案したのが「トウールビヨン」と呼ばれている機能である。

これは、テンプ アンクル ガンギ車といった脱進機と調速機をひとつの籠に

収めて輪列の最終歯車の上にそっくりのせ、時計の作動中に回転させること

によって姿勢差を相殺してしまおうという機構。

言われてみればなるほどすばらしいアイディアである。

いざ作ろうとしたとき 問題は機構が複雑になりどうしてもコストが上昇して

しまうこと また 立体的な構造になるため 薄型化が難しいことが

あげられる。

時代が進み ゼンマイの素材の改良や部品精度の向上などにより

トウールビヨン機構を用いなくとも実用上十分な時間精度を

確保することが可能となり この機構は時計師の腕を示す複雑機構の

一種となって 特殊なモデルあるいは ごく一部の高級時計に採用される

のみとなってしまった。

80年代にはいってからも 高級時計としての位置付けであったが

80年代の後半に始まる機械式時計の復興に伴ってこの奇妙な

しかし意味深い機構にスポットが当てられている。

今現在 時計の精度のために(機械式で) トウールビヨンを

求められる人はいるのでしょうか。そうは考えないのではないでしょうか。

トウールビヨンそれは いまとなっては ごく少数の時計師が

作ることのできる 芸術品と いってもいいのではないでしょうか

だから 憧れるのではないでしょうか。

カテゴリー:時計屋のひとりごと

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